ダイヤモンド社オンラインnewsより
働き盛りのビジネスマンを襲う 本当に恐い病気とは!長年の粗食信仰が生んだ誤解
40歳で栄養失調になったテレビマン思わぬ原因で
長年の疲労、顔色の悪さに悩まされた
テレビ制作会社勤務Dさん(40歳)
徹夜でロケ弁が当たり前自分で食べるものくらいは粗食にと心がけていたが・・・
Dさんの仕事場はテレビ局。技術系の専門学校を出て20年。テレビ制作会社に入社してテレビ局に勤務している。テレビ局は24時間、人が動いているので、時間の感覚がなくなってしまった。朝9時に会社に行き、夕方帰宅して、家で晩御飯を作って食べる生活なんて、社会人になって一度も記憶にないと思う。
Dさんの起きている時間の食事のほとんどは、揚げ物がメインのロケ弁当かコンビニ弁当、あるいは編集室の出前のピザ。最近は出前の釜飯も加わったが、40になっても一人暮らしで今もそんな食生活を続けている。

情報番組のアシスタントディレクターから、現在はチーフディレクターになった。しかし、やっていることは昔と変わらない。企画会議、取材、編集、オンエア。これの繰り返し。1週間で唯一休めるのは、週1回のオンエア日の午後だ。前日編集室で徹夜していることも多いから、この午後だけは寝だめをする。午後3時くらいから12時近くまで寝て、起きていつもの夕飯を食べる。メニューはコンビニのおにぎりだ。

Dさんはテレビで「粗食がいい」と報道されているのを知り、それを実践していた。15年前のアシスタント時代に日本海側の修行のできる有名なお寺の精進料理を取材したことがある。そこのお坊さんたちは粗食ながらイキイキとみえた。自分1人の食事くらいは粗食がいいだろうと、どんなに遅く帰ってもコンビにのおにぎりか、パックのごはんに納豆をかけたものだけを食べてきた。一食300円前後。財布にもやさしいこの食生活は、メニューを考える手間もなく、面倒でないのだ。
会う人会う人に言われる「具合悪い?」テレビ局で制作に関わるほぼ全員が、いつも睡眠不足のうえ不健康そうで、疲れた顔をしている気がする。男性の場合は、肌に透明感が無くなっていて、ハリもない。Dさん自身も35歳を過ぎてから疲れが顔に出ているように感じる。
番組のスタッフや出演者からは、「Dさんどこか具合悪そう」「Dさん元気なさすぎ」とよく言われる。自分で意識はしていなかったが、周りからは疲れて見えるらしい。たまに「Dさん顔色ないよ」と言われることもある。野菜不足を気にしてサプリメントを飲んで見たが、あまり効果がでない。決して色黒ではないのになんか肌がくすんでみえる。
人間ドックで栄養失調がみつかる疲れてはいるが、動けないほどではない。でも、元気もやる気もでない。よく眠れない。朝起きる時に、疲れていて床から出られない。
こんな状態になじみ過ぎているせいか、自分は病気という自覚がなかった。しかしDさんは、年に1回定期的に受けている健康診断で、なんと栄養失調と言われてしまった。血液検査で再検査となり、もう一度、専門医に診てもらった。特に驚いたのは
同世代の男と比較して骨密度と筋肉量が低下していたことだ。
長年のテレビ局生活。不規則かつ運動不足は自覚していたが、3食食べている自分がまさか栄養失調で、しかも骨密度や筋肉が衰えていると言われたことが信じられなかった。
診察室での回答は意外なものだった。「3食食べていますが、きちんと栄養が摂れていませんね。毎日、1日1回は肉と魚を交互に食べてください。人間の筋肉はたんぱく質でできています。動物性たんぱくを摂らないと人間はパワーがでません。また魚も大切です。特に魚に含まれる油は不飽和脂肪酸といわれ脳にまで届きます。脳まで届くということは神経細胞にも届き疲労感も軽減します。
朝は魚。夜は肉を食べると決めて、食生活を変えてみませんか?面倒だったら魚の缶詰や鮭フレークでかまいません。お肉は自分で調理するのが大変だったら、缶詰でもいいですよ。野菜は冷凍食品でも大丈夫ですし。ホウレンソウなどの青い野菜を電子レンジで温めてお浸しにしてみてください」とのアドバイスを医師から。
Dさんは目からうろこだった。体にいいと思いこんで続けていた粗食の食生活で栄養失調になってしまっていたからだ。Dさんはその日以来、魚の缶詰か鮭フレークに野菜の味噌汁を朝ごはんにした。時間がないときは魚肉ソーセージと野菜ジュースにした。夜は外食なら豚の生姜焼き定食。家で食べるなら野菜料理一品と肉の缶詰などにした。
1ヵ月を過ぎる頃には、みるみると元気が出てきた。不思議とみんなに「具合悪いの?」と言われなくなった。そうするとここなしか、性格も穏やかになりイライラしなくなった。寝つきもよくなった。
大変な病気をする前に食生活を変えてよかったと実感したDさんだった。筋肉不足や骨量不足は運動で改善するらしい。とはいえ、運動する時間もない。局の階段をかけあがるだけでいいと言われたので、前よりもエレベーターを使わないように心がけたDさんだった。
専門家が教える
骨密度と筋肉量の低下を防ぐ方法人間ドックなどの予防医療に力を入れる東京クリニックで骨密度や筋肉量を計測する骨密度ドックを担当する板橋明先生はこう語る。
「最新機器により、従来より高彩・高画質を実現し、骨密度だけでなく骨の形態や強度、骨の微細な変化を計測できます。また、脂肪量、非脂肪量を定量する機能も充実しているためダイエットコントロールやスポーツ医学にも応用可能です。以前は痩せるためにこの検査をする方が多かったのですが、最近は痩せすぎの防止のために検査をされる方もいます。骨密度や筋肉量は女性だけでなく男性も一度計測することをおすすめします」。
さらに、テレビなどでおなじみの管理栄養士であり医学博士の本多京子氏は、最近増えはじめたシニアの粗食を問題視している。

本多京子
実践女子大学家政学部食物学科卒業後、早稲田大学体育生理学教室研究員を経て1986年東京医科大学で医学博士号を取得。1992-1996年まで巨人軍の栄養指導を担当するなど幅広いスポーツ選手の栄養指導を手がける。
「ここ数年、健康ブームやダイエットブームによって、「(しっかり食べるよりも)粗食の方が健康によい」という誤解された認識が広がっています。それらは私の著書『定年後、人はなぜ太るのか(家の光協会)』でも指摘しているとおりです。シニアになっても若いときと必要なたんぱく質の量はかわりません。豆腐や納豆などから摂る植物性たんばく質と同様、肉や魚から摂る動物性たんばく質も重要です。また魚にはDHAという不飽和脂肪酸が含まれています。朝の時間がないときは缶詰などの保存食を上手に利用するのもよいかと思います。魚に含まれるDHAは脳が元気になるとも言われています」。
財団法人 日本ヘルスケアニュートリケア研究所では、栄養学の専門家とも積極的に意見交換しています。最近の食事の傾向はカロリー過多、脂肪過多で栄養失調です。今回取材した方のように人間ドックで自分の骨量、筋肉量まで一度検査してみてください。